iMac (21.5-inch, Late 2015) の修理レポートです
本日ご紹介するのは東京都豊島区にお住まいのお客様からのご依頼です。
電源ボタンを押すと起動途中で電源が落ち再び起動する。この動作が延々と繰り返される、いわゆる再起動ループの症状が出ているMacの修理を行いましたので、そちらをレポートさせていただきます。
この修理はお預かり当初に見つかった不具合に加え、途中から更なる問題点が後から見つかるという(あまり歓迎したくない)レアケースの修理でもありました。
初期診断
再起動ループの症状は事前のご申告にもありましたが、実際にこちらでも最初の起動から確認できました。これは当然と言えば当然ではありますが、実はお客様の環境下では症状が起きていたのに弊社では何も起きないというケースも結構あるため、まずはご申告の症状をこちらでも確認するというのは重要なことだったりします。
再起動ループの症状が内蔵のストレージやシステムに起因するものであるのか、それともメモリやグラフィックボードなど別の要因によるものなのかを調べるため、外付HDDに入ったシステムでの起動を試した所こちらではすんなりと起動しました。こうなるとHDDやシステム側、つまりは内蔵ストレージに起因した問題の可能性が強まります。またそこに輪をかけてHDDの状態を調べる検査ツールを使ったところS.M.A.R.T.情報に注意の警告が表示されました。
2015年のiMacとなれば、すでに8年の時間が経過していることになります。搭載されているのは1TBのSATAのHDDですから、耐用年数的にボチボチ不具合が起きてもおかしくはありません。
まずはデータを保護する
ストレージ不良の疑いがあるとなれば、これ以上状態が悪くなる前に(データにアクセスが出来ているうちに)一刻も早くデータを保護する必要があります。現状内蔵のHDDに入ったシステムからの起動は再起動ループが発生し出来なくなっていますので、外付けシステムでの起動で何とかデータを抜き出す事に成功しました。とりあえずは一安心です。
データが保護できたので、現時点での見立てが正しいか、他にも問題が隠れていないか更に検査を継続します。
ストレージ不良として診断結果報告
更なる検査ではハードウエアのテストも全てパス。HDD以外に問題は見つかりませんでしたので、お客様へは経年による内蔵HDDの劣化が不具合原因だと報告し、SSDへの交換でご了承をいただきました。
カーネルパニック発生
その後、SSDへの交換は上記画像の通りスムーズに終わり本体の組み上げを行ったのち、いざOSのインストールを行おうとしたらいきなりのカーネルパニック発生です。この症状はシステムに致命的なエラーが発生した時に表示されるものなのですが、その原因はハードウェアの問題またはソフトウェアの問題、またはハードウェアとソフトウェアの相互作用による問題など様々。
しかしストレージを変える前は特にこのような症状は起きていませんでしたので、交換したSSDに問題があったのかそれとも全く別の問題が隠れていたのか。事態は思わぬ展開になりました。
まさかのロジックボード不良
上記を受けてまず最初に疑ったのが交換したSSDの初期不良です。しかしこれは特に問題なし濡れ衣でした。気持ち的にはSSD不良なら正常なSSDに交換すれば良いわけなので正直こちらなら良いなと思っていました。しかし残念ながら原因は別の箇所にありました。
不思議な事に、本体をお預かりした時点で行ったハードウエア全体の検証ではストレージ以外は特に異常なしという結果になっていたはずなのですが、ストレージ交換後に全く同じ検証を行ったところ以下のようなエラーが検出されました。
なんとメモリーエラーです。
確かに元々ご申告にあった不具合も、後から起きたエラーもそのどちらもメモリーエラーとしてもよくある症状ではありますが、この結果は正直ショックでした。なぜかといえば、このモデルのiMacはメモリがロジックボードに組み込まれてしまっておりメモリだけを交換する事が出来ないからです。つまりはメモリーのエラー=ロジックボードの故障という事になってしまうからです。
ロジックボード交換
お客様にここまでの経緯と新たに発覚した診断結果をご説明したところ、『今後もこのMacの使用を継続したいのでロジックボード交換も行って欲しい』とのご意向でしたので追加でパーツの手配を行いました。
ロジックボードを取り外した状態
故障したロジックと新たに用意した交換用ロジック
交換作業完了
交換用のロジックが到着したので早速交換作業行い、無事に正常起動確認。ここで改めてハードウエアのテストを行ったところメモリも異常なし、全て問題なしという結果になりました。
ちなみにロジックボード交換を行うと、シリアル番号が変わるだけでなく全く別の本体という扱いになるため、AppleIDやメールアプリなどでシリアル番号の再入力を求められたり、他社製のアプリケーションの一部では再認証や再インストールを行わなければならないケースがあるのですが、今回は特にそのような事もなく全てすんなりと使う事ができました。
シリアル番号が新しいものに変わっています。
まとめ
今回はまさかの展開で通常よりも修理期間が長くなりお客様にご迷惑をおかけしましたが、SATAのHDDをSSDに交換することで起動スピードも格段とあがり動作も快適になり、そして何より問題のあったロジックボードを取り替えることで正常で安定した動作が戻りました。お客様にも喜んでいただけるのではないかと思います。
iMacのLate2015はすでにメーカーのサポートが切れてしまいビンテージ扱いになってしまっておりますが、実際の所はまだまだバリバリと動いてくれます。対応OSの問題は避けようのない部分ではありますが、アーストでは可能な限り修理を行ってまいりますので、メーカーから『もう交換するパーツがないので修理できない』と断られてしまった本体をお持ちでも諦めず、弊社までご相談ください。
05679-007